学級崩壊を防ぐ。『安心できる教室』にするための3つの方法。

 2年生を担任したときのことです。
 学年の先生達と、学年目標を話し合って決めました。
 
 学年目標『チームわかば』

  たくさん   わらって
  みんなで   かがやいて
  あんしんする ばしょで
  ぐんぐん育つ チームわかば

 学年・学級の目標で「笑う・笑顔」「輝く」という言葉はよく出てくる言葉です。

 なぜ、『安心できる場所』という目標を、掲げたのかには理由があります。

 私は2年間、虐待対応の現場で働かせてもらった経験があります。

 その時、子ども達に関わって思ったことは、子ども達は、安心・安全な場所でしか、本当のことは言えない、本当の姿は見せてはくれないということです。

 義父から虐待を受けていた子どもを保護したことがあります。

 アザができる度に、その子は、担任の先生に「お父さんとボクシングの練習をしていた。」と話しました。その子は、施設に無事保護されて、自分の安全を確認して、安心して初めて、本当は、ずっと殴られていたことを語りました。

 子どもが本当のことを話してくれるためには、安全で安心できる環境が、どれほど重要かを教えてもらいました。

 子ども達が、安心できる教室を作りたい。
 子ども達が、教室に「ただいま。」と帰ってきてくれる場所にしたい。
 子ども達が、大きな怪我や事故をすることなく、元気に「さようなら。」といって帰っていってほしい。

 そのために、私は3つのことを取り組みました。

 まず、一つ目です。4月に、一人一人の机・椅子の高さを調整することです。

 毎日、子ども達が座る場所が居心地がいいことが、子ども達にとって、心の安定につながる重要なことです。

 落ち着きのない子どもの机は、よくガチャガチャと音がします。

 学級が荒れているクラスは、ガチャガチャと音が出ても気にならないクラスです。
 だから、授業中に、子ども達がおしゃべりをしても気にならないクラスになっていきます。

 落ち着きのない子ども達は、落ち着かない環境が作り出しているのです。

 子ども達も居心地のいい机・椅子を求めています。
 だからといって、放課後に、教師一人で、全員の机・椅子を一気に調整することは困難です。新学期早々、教師が疲れ切ってしまったら大変です。

 私は、子ども達に協力を求めて、隙間の時間を見つけては、一緒に全員の机・椅子の調整をします。子ども達も、自分たちが快適な生活ができるためなら、何でも協力的です。

 ゴールデンウィークまでを目標に、ゆっくり、一人ずつ、居心地のいい高さにして、安心感に繋がる教室環境の土台を作ります。

 2つ目は、毎日、放課後は、教室を掃き、一人一人の机・椅子を整えることです。

 教室を掃除して、1日をリセットすることで、私自身の気持ちもリセットします。

 整然とした教室には、美しい気が流れています。

 放課後、子ども達、一人一人の机を整えながら、一人一人のことを考え、今日の私の関わり方はどうだったのか反省します。

  言葉掛けが足りなかった子ども、いいところを見つけたのに伝えられてなかったことなど、明日は伝えようという振り返りの時間になります。

 時には、机の落書きを見つけて次の日に事情を聴くこともあります。教室に落ちているプリントを見つけて話を聴くこともあります。

 今日の一人ひとりの様子、学級の様子が、放課後の教室に現れています。

 学級の状況を、きちんと受け取るためにも、放課後、教室を整えることは大切なことです。

 そして、最後に、教室にお礼を伝え、一礼して、教室を出ます。

 教師は、子ども達の命をあずかっている仕事です。

 保護者の方々の願いは、「我が子が、今日も元気に過ごして、元気に帰ってきてほしい。」ということです。

 もし、授業中に、子どもが怪我して失明をしてしまったら・・・。プールで溺れて意識不明になったら・・・。保護者の方の悲しみや絶望は計り知れません。

 だからこそ、朝、子ども達を元気に迎え、元気に帰すことは、教師にとって、とても大切なことです。

 大きな怪我や事故なく一日を終えられることは当たり前ではなく奇跡なのです。

 「今日も、子ども達全員が安全に生活して、大きな怪我や事故なく終わることができました。ありがとうございました。」と、美しく整った教室にお礼を伝えます。

 そのおかげもあり、私が受け持ったクラスの子ども達は元気に一年を終えることができています。

 別の教室での学習後、「ただいま。」と帰ってくる子ども達もいます。

 毎日、感謝を伝える私の教室は、とてもいい雰囲気になっていきました。

 虐待現場で、悲しい目をした子ども達に出会い、子どもたちは、こんなにも深い悲しみを背負って学校に行っていることを知りました。

 だからこそ、私は、教室は子ども達が元気になる場所であってほしいのです。

 私は、新学期に、必ず子ども達や保護者に伝える詩があります。
 それは、初任の時に出会ったある校長室の入り口に飾られていた詩です。

 子ども達がどこか行きたいと思ったら
 それは 学校であってほしい

 そこには 先生と友達が 待っている

 そこには 先生の笑顔がある
 そこには 友達の笑顔がある

 そんな学校を わたしはつくりたい

 私も、そんな学校を、そんな教室をつくりたいです。

 笑顔あふれる安心できる教室をつくるために、私が努力をしてきた3つのことです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です